報告三 ワイルド刑事と童貞刑事と美貌の上司

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「そんなぁ!」  ナオヤが悔しそうに声を上げる。しかし隣のシュウイチが、まだ抗議を続けそうなナオヤを止めた。 「諦めよう、ナオヤ。お前が払った分は俺が返すから、もう帰ろうぜ?」  シュウイチの方は、とにかく早くこの店から出たいようだった。  幸代がため息を吐き、店の奥に引き返し、すぐに戻ってきた。 「……坊やたち、北荒間で遊びたいなら、もう少し勉強してきな」  そう言って、幸代はシュウイチたちの服と荷物を彼らの前に放り投げた。そしてまた、面倒臭そうに奥に戻っていった。  慌てて着替え始めた彼らを尻目に、桂奈は店長のそばに寄った。  事態が収拾して落ち着くと、店長は別のことが気になったらしい。店長は口髭を擦りながら、見慣れぬ警官二人を見ていた。 「桂奈さん、あの人たち……誰よ? 随分毛色の違う男だね」  北荒間が長い店長は慎重だ。近づいてきた桂奈に、声を潜めて訊いた。  桂奈はさらに声を小さくし、店長に耳打ちする。 「実はね、本部のお偉いさんと、そのお付なの。お偉いさんの方がね、結婚前に北荒間で遊びたいんだって」  店長がチラッと穂積を見て、目を瞬かせる。 「そりゃまた、結構な趣味だね。金も持ってるだろうに、よりによって北荒間で遊びたいなんて。それに、婦警に北荒間を案内させるって……」  桂奈はいつもいじめられている仕返しに、くだらない意地悪を思いついた。  これは穂積のため、穂積や井上が北荒間にいたことを口止めするため、という言い訳を盾に、面白おかしく脚色してやる。 「……相当な変態、なんだって。あたしに案内させるのもプレイの一環らしいよ? これから連れてくの、ここの前のM性感だから」  ああ、と店長は大きく頷き、ニヤリと笑った。 「お堅い職業には、ドMが多いって聞きますもんね。日本の警察も、色んな人がいるもんですな」  穂積が変態、と信じた店長に、桂奈は内心で大笑いした。  その悪い心をひた隠し、桂奈は真面目な顔で店長に頼みごとをする。
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