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「彼らを案内中に、たまたまあの男の子たちに助けを求められて……。でも、お偉いさんが北荒間に遊びに来てるの、あちこちに知られるわけにいかないのよ。だから……」
「ええ、ええ、承知してますよ。もちろん、どこにも喋りません。黙っておけば、そちらに貸しもできますしね?」
北荒間最古参のソープ店店長は、抜け目がなかった。
桂奈は、北荒間の人間には敵わないと諦めて、そういうこと、とだけ答えた。
もう一人、警察のお偉いさんが北荒間の外れに現れたことを知る人物――幸代――がいるが、彼女の口が堅いことは保安係の仕事でよく知っているので、あえて口止めにはいかなかった。
店長との口裏合わせが終わり、ちょうど若者たちの帰り支度も整ったようだった。
さて、と振り返り、桂奈は固まった。
穂積が――睨んでいた。
今の会話を聞かれたのかわからないが――確認する勇気は、桂奈にはなかった。
「あ、着替え終わりました? じゃあ、皆さん、帰りましょう!」
桂奈は穂積を見ないようにして、嘘くさいほど明るく、男たちを店から出るよう促した。
面倒事は、さっさと片付けてしまいたかった。
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