報告三 ワイルド刑事と童貞刑事と美貌の上司

9/21

137人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
「彼らを案内中に、たまたまあの男の子たちに助けを求められて……。でも、お偉いさんが北荒間に遊びに来てるの、あちこちに知られるわけにいかないのよ。だから……」 「ええ、ええ、承知してますよ。もちろん、どこにも喋りません。黙っておけば、そちらに貸しもできますしね?」  北荒間最古参のソープ店店長は、抜け目がなかった。  桂奈は、北荒間の人間には敵わないと諦めて、そういうこと、とだけ答えた。  もう一人、警察のお偉いさんが北荒間の外れに現れたことを知る人物――幸代――がいるが、彼女の口が堅いことは保安係の仕事でよく知っているので、あえて口止めにはいかなかった。  店長との口裏合わせが終わり、ちょうど若者たちの帰り支度も整ったようだった。  さて、と振り返り、桂奈は固まった。  穂積が――睨んでいた。  今の会話を聞かれたのかわからないが――確認する勇気は、桂奈にはなかった。 「あ、着替え終わりました? じゃあ、皆さん、帰りましょう!」  桂奈は穂積を見ないようにして、嘘くさいほど明るく、男たちを店から出るよう促した。  面倒事は、さっさと片付けてしまいたかった。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

137人が本棚に入れています
本棚に追加