報告三 ワイルド刑事と童貞刑事と美貌の上司

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 男たちを急き立て、ソープ店から外の通りに出ると、前のM性感の看板に灯りがついていた。 「……あの……」  店を出たところで、メガネの美少年――ナオヤが桂奈たちを振り返った。 「今日は、本当にありがとうございました!」  そう言って、ナオヤは小さな頭をペコリと下げた。隣のシュウイチが、慌ててナオヤを同じように頭を下げる。 「今さら確認だけど、君たち……十八歳以上ですよね?」  桂奈は今になって、肝心なことを確認していなかったことを思い出した。  桂奈の確認に、ナオヤとシュウイチは大きく頷き、ナオヤが答える。 「はい、俺たち二人とも二十歳で……大学生です」 (大学生……)    よい年頃だ、と桂奈はオヤジ臭いことを思った。 「うんうん、じゃあ風俗に来るなとは言いませんけど、もうちょっと事前に下調べしてから来なね? 北荒間でソープなんて、誰も行かないんだから。北荒間にもう一軒あるソープも、ここと同じような店だから……ソープ行きたいなら、別のとこ行った方がいいですよ?」  純朴な大学生たちを哀れに思った桂奈は、彼らにアドバイスした。  すると、ナオヤが驚いてシュウイチを振り返った。 「……そうなの? シュウイチ」 「え?! ああ、えっと……」  桂奈は眉をひそめた。どうも、彼らには行き違いがあるようだ。 「あの……ナオヤ、くん? 君は彼に、ソープに行こうって北荒間に連れて来られたの?」  困っているシュウイチを指差し、訊ねる。 「はい。だってシュウイチは、部内で一番風俗詳しいって有名で……」 「ナオヤ! 変なこと、警察の人の前で言うなよ!」 「だ、だって……シュウイチが風俗詳しいって言うから、風俗で童貞捨てたいってシュウイチに相談したのに!」  ブフッ。思わず、桂奈の鼻息が荒くなった。  井上が、怪訝な顔で桂奈を見てきたので、なんとか動揺を隠して涼しい顔を作る。  しかし、うら若き大学生たちは、桂奈の心を乱し続けた。  ナオヤがシュウイチの腕を掴み、強く揺する。
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