報告三 ワイルド刑事と童貞刑事と美貌の上司

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 残念ながら、北荒間のラブホテルは男同士では入れないのだ。特殊な立場の男たちを除いては――。   その時、美しい悪魔――が、若く世間知らずな大学生たちに、囁いた。 「二十歳を過ぎてるとはいえ、君たちはまだ学生なんだろう? こんなところにいるもんじゃない。俺が送るから、早く帰りなさい」  ストロベリー・バスにいる間、気配を消し続けた穂積が、怖ろしいほど優しく微笑み、大学生二人にそう声をかけたのだ。  さっきまでろくに口も利かなかった美貌の男が、突然笑顔で自分たちに話しかけてきて、大学生二人は大いに戸惑った。  しかし、テレビで見かけるような美しい男に優しく微笑みかけられれば、男であっても気を許してしまうらしい。二人は、じゃあ、と大人しく従ってしまった。 (童貞がピンチ!)  桂奈は――興奮した。  穂積が同好の士、であることは大輔から聞いている。  穂積は、見たことのない優しい笑顔で彼らと会話し、見事彼らの自宅を聞き出した。  ナオヤは実家暮らしだが、シュウイチは荒間市内の別の駅近くのアパートで一人暮らしだと聞いて――穂積の目が妖しく光った。  桂奈は悩んだ。  可憐な美少年のナオヤは穂積の好みではなく、穂積の狙いはシュウイチだと思われるが、タフな穂積のことだから二人まとめて相手にすることも――。 (可能なはず!)  デキる男は、夜もデキるものだ。  桂奈は興奮して、鼻息が荒くなって、顔も赤くなった。 「……古谷さん、俺は表の通りでタクシーを拾って、彼らを自宅に送ってから帰ります。井上さん、なにか進展があったら、必ず、全て俺に教えてください」  では。と、穂積は桂奈たちに有無を言わさず、大学生二人を引き連れ、歩き出した。  ナオヤとシュウイチが去り際、桂奈たちに何度も頭を下げた。  桂奈は、無垢な彼らに、切なくも甘酸っぱい思いで胸がいっぱいになった。 (さよなら……童貞大学生……)  ん? と首を傾げる。  童貞大学生――彼らもまた、DDであった。  桂奈は一人でこっそり噴き出した。 「……へぇ、管理官ってあんなに面倒見がいいんだ?」  なにも知らない井上が、穂積の意外な一面に感心している。  穂積の秘密を洩らしたら、桂奈の命はない。  警察官としても、もしかしたら人としても――。  だからもちろん、桂奈は、そうですねぇ、と素知らぬフリをした。  
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