報告三 ワイルド刑事と童貞刑事と美貌の上司

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 穂積たちと別れた桂奈と井上は、荒間駅に向かって歩き出した。  すっかり日も暮れ、週末ほどでないにしろ、北荒間が賑わい始めた。その賑わいを、井上は興味深そうに振り返るが、桂奈は無視して早足で歩いた。  やがて二人は北荒間から出て、荒間駅へ続く商店街に着いた。  桂奈は少しだけ、歩くスピードを緩めた。ちょうど、チェーン店の居酒屋の前を通った。 「なぁなぁ桂奈ちゃん、奢るから飯食って帰ろうぜぇ?」  居酒屋の看板を眺めながら、井上がしつこく桂奈を誘う。桂奈は何度も断ったのに、だ。  桂奈は足を止めず、ため息を吐いた。 「結構です……てゆうか、イヤですよ。こんな職場に近い所で、井上さんと食事してるところ誰かに見られたら、なに言われるかわからないですもん」 「ええ~、俺、桂奈ちゃんとだったら噂になってもいいんだけどなぁ」  井上がデレッとニヤける。  桂奈は顔をしかめた。愛妻家の、謎の遊び人アピールにはウンザリだ。 「最近は不倫とかうるさいんだから、噂だけでもどうなるかわかりませんよ? 最悪、捜一から飛ばされるかも……小野寺さんみたいに」 「容赦ねぇな、桂奈ちゃん!」  ヒデェ、と言いながら、井上はゲラゲラと笑った。 「……でも小野寺もさ、本部に戻るの諦めるのは、まだ早いと思うんだけどな」 「小野寺さん、ここの仕事楽しんでるから、捜一に戻る気ないと思いますよ?」 「そうかねぇ? けどさ、あのDDくんが捜一行きになったら、小野寺の気も変わるんじゃない?」  桂奈はギクリとして、隣を歩く井上を見つめる。  目が合うと、井上はなんでもない風に、ん? と首を傾げた。  井上が、大輔と晃司の関係に気づいたわけではないようだった。  桂奈は、どういうことですか? と慎重に訊いた。 「小野寺、やたらとあのDDくんを目にかけてるじゃん。あのイケメンが捜一に来たら、小野寺もついてくんじゃねぇかなぁ?」 「井上さん……妙に小野寺さんに拘りますね」  桂奈は気になってしまった。 (もしかして井上さんって、小野寺さんのこと……)  チラリと井上を見る。  夜になったからか、うっすら髭が見える。  濃い顔が、明るい時間よりいっそう濃くなっていた。  
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