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二人以外に人気のない、真夜中の生活安全課。照明はほとんど落とされ、保安係の席だけ頼りない蛍光灯が照らす。
その夜、大輔と晃司は二人きりで当直だった。
「お、小野寺さん……ダメです、こんなところで……」
大輔の抗議の声が、弱々しく生安課に響く。
「平気だって。さっき、誰もいないの確認してきたから……」
大輔を抱きしめる晃司が、いやらしく笑ってキスを迫る。大輔は戸惑いながら、少し背の高い晃司を見上げた。
その目はすでに、熱で潤んでいる。
「で、でも、自分の席でなんて……」
二人が抱き合うのは、保安係の大輔の机の前だった。当直も深夜になって、こらえ性のない晃司が、恋人にチョッカイを出し始めたのだ。
ウブな恋人は、年上で手練れの恋人に逆らう術を知らず――。
「やっぱりまずいですよ……」
「うるせぇなぁ……じゃあキスだけ。な?」
「も、もう……」
大輔は、キスだけなら、とそっと目を閉じた。そんなのは、晃司の罠だと知っていながら――。
「……ん、んぅ……」
甘い吐息が、大輔から零れる。それは晃司のキスが巧みで出るのか、本能的に晃司を煽りたくて自ら零しているのか――大輔にもわからない。
熱い唇、濡れた舌によって与えられる快感に、大輔の足が崩れ落ちそうになる。大輔はたまらず、晃司の厚い背中に回していた手を引き抜き、逞しい首に縋りついた。
一瞬、二人の唇が離れる。二人は濡れた目で見つめ合う。そして――すぐにまた、二人の唇が重なる。
激しく互いを求めあって――。
職場に合ってはならないキスの淫靡な水音に、大輔が震える。唇を犯されながら、耳まで晃司に責められているようだった。
「……んっ、むっ……はぁ……ん」
大輔はキスだけで、晃司に融かされてしまう。
「……ダメ、とか言いながら、大輔の方がキス、激しいし」
晃司がニヤリと――嬉しそうに――笑う。
晃司もまた、愛しい恋人の拙いキスに夢中だった。
「そっ、そんなこと……!」
キスで火がついた晃司は、大輔のベルトに指をかけた。
「晃司さん! き、キスだけって」
「んなの、お前も信じてなかったろ?」
晃司は手を止めず、悪い笑みを浮かべる。悪いけれど――セクシーで、大輔は抵抗できなくなる。
晃司は大輔のベルトを外しながら、三度大輔に口づけた。大輔は拒むことなく、キスに応えた。
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