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「なんでもないです」
むしろ、面白がる余裕さえあった。
桂奈は、晃司の倍は迫力のある暴力団と渡り合う、県警刑事部組織犯罪対策第四課――通称マル暴――に、女性で初めて在籍したことのある刑事なのだ。
桂奈は晃司の鋭い視線に気づかぬフリをして、一向に進まない報告書の続きを書こうとノートパソコンに向き直った。
しかし、また邪魔が入る。机の上に置いたスマートフォンが震えて、メッセージの着信を報せた。
面倒臭そうにスマートフォンを開き、桂奈は目を瞬かせた。それからもう一度、隣の晃司を盗み見る。
今度は気づかれる前に、スマートフォンに視線を戻した。
メッセージは、北荒間にあるファッションヘルス「ちぇりーはんと」の風俗嬢で、晃司のお気に入り――加恋(かれん)からだった。
桂奈は晃司から隠れるように、メッセージを呼んだ。
メッセージは、加恋が桂奈と二人で会いたい、という少し意外なものだった。
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