第6章 広がる波紋

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またある時は、闘犬に興じる高時らの姿があった。 100を越える犬を敵味方に分け噛み合わせる、極めて異様な遊戯である。 体重35kgを小型犬とし、対する大型犬は55Kgから始まり100Kgを越す。体重ごとに組分けされ、雄犬のみが土俵上で闘いを繰り広げていく。 1対1の場合もあれば、戦(いくさ)さながら、多数を一度に闘わせる時もあった。 闘争本能が強い土佐犬の性格上、大人の雄同士を近付けてはならないと言われている。が、高時は、それを敢えて好んだ。 喧嘩好きな野良犬が「ならず者」なら、闘犬は「プロの殺し屋」である。動く者全てを敵と見なし、親・兄弟であろうと攻撃を仕掛ける。飼い主とて例外ではない。 銅鑼(どら)の音が、華々しく鳴り響く。 土俵に雷帝(らいてい)が登場すると、場内には、さざ波のような感嘆の声があがった。京の都で食い荒らしていた、高時お気に入りの例の癖犬である。 並外れた堂々たる体格は、群衆を驚嘆させるには充分だった。
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