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―――顔は至って普通。可もなく不可もない。平々凡々だ。
……けれど、何処か可愛さがあり……守ってあげたくなるような、儚さがあった。
「自分の息子だけど……至って普通よ。名前は黒瀬凜太朗。今は大学に通っていて一人暮らし。今年で丁度20歳かしら。」
「……年上ですか。」
「あら、そうなの。……まぁ、別に年とかは関係ないわ。とりあえず、お願いしてもらってもいいかしら?……報酬はしっかりと出すわ。こんな事してるなんて、よっぽどお金が必要なんでしょう?」
―――何か、この人に言われるとカチーンっとくるものがあったけれど、依頼人だ。何とか俺は笑顔で応対した。
「はい、精一杯頑張らせていただきます。よろしくお願いします。」
母親と別れて、俺は貰った黒瀬凜太朗の情報について書かれた資料に目を通す。
大学、その周辺の地域、スーパーやコンビニ、飲み屋、そして一人暮らしのアパートまで全てを確認し、俺は少しの間アパートに張ってみる事にした。
1時間ぐらいが経過し、先程写真で見せてもらった男性が部屋に戻って来た。
「……あの人か。やっぱり、何処か寂しそう。」
―――そんな瞳を持った人だった。
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