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彼は走ってきたのか……息を切らして俺の元に現れた。
「……ごめんなさいっ…!ちょっと遅れちゃって……」
申し訳なさそうにする彼に、少しだけ悪戯心が働く。
「遅れないって言ったじゃないですか。……あぁ、焦った…。来てくれないかと思った……」
少しだけ問い詰める口調で彼に愚痴る。
「えっ?ど、どうしてっ…?」
案の定、困った表情の黒瀬凜太朗を見て……可愛いと普通に思った。
「だって、黒瀬さん…待ち合わせとかに遅れなそうな人じゃないですか。だから……来ないのかと。」
「本当にごめんなさい……。迷惑かけて……」
声のトーンが更に暗くなる黒瀬凜太朗に、何か年上の癖に……俺の母性本能?が擽られた。
―――いや?これは母性本能なのか?
俺は彼の頬を両手で包み込み、俯いた顔を上へと向けさせた。
「……謝らないで下さい。これから楽しむことだけ考えましょ?」
「…は、はい。」
思わず逸らされた目だったが……彼の顔が赤くなっているのを俺は見落としはしなかった。
映画を観に行く事になり、何を観るかとなり……観たい映画が一緒になった時、俺は正直心の底から嬉しかった。
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