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―――しかし、常にその事が頭の中で過ぎって……リンさんをしっかりと受け止めてあげられなかった。
「……翔君?」
「あっ…いや……何でもないんです!気にしないで下さい!」
「……そう、か…。」
寂しそうに笑う彼を見て、また胸が締め付けられた。
彼を抱く時。
彼と久し振りに出掛けた時。
―――俺は理性を失う。
彼を、どうしても手に入れたくて。
何とかしないと……彼を誰かに取られてしまいそうで。
俺は、焦ってたんだと思う。
……俺には、時間が迫ってきていたから。
「翔君……来週って、来れる?」
「来週……あ、すみません。その日は大事な約束があるので……。」
せっかくリンさんに誘ってもらえたのに……その日はリンさんの母親との約束が入っていた。
その俺の返事を聞いたリンさんの表情って……どんなものだったと思う?
「……そっか、分かった。じゃあ、またね。」
―――その時の彼が……余りにも消えそうで、儚くて……俺は玄関から彼を呼び止めた。
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