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「そんな事はどうでも……」
「もう息子にも近付かないで。それじゃあ。」
そう言うと、彼女は踵を返して街の中へと消えて行った。
―――俺は、呆然と立ち尽くすしかなかった。
……どれぐらい、その場に立ち尽くしていたのだろうか。ポケットでスマホが震え、確認すると……リンさんからのメールだった。
『翔君、明日会えるかな?
忙しかったらいいけど。』
そんなメールに嬉しさがこみ上げてきた。
『今日の埋め合わせですか?
本当に今日は行けなくてすみません。俺は全然大丈夫ですよ!』
それからの返信は来なかった。
―――けれども……俺はただただ嬉しくて、母親に言われた事も忘れて次の日、リンさんに会う事だけを楽しみにして眠りについた。
「おはようございます。すみません、早く来すぎましたか?」
「そんな事、無いよ。上がって。」
リンさんの声のトーンが、いつもより低い気がする。
「……どうしたんですか?元気、無くないですか?」
俺は、本当に彼が心配で……彼の顔を覗き込んだ。
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