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「……無理、しなくていいよ。」
悲しそうな、彼の顔。
俺の瞳に映る、彼の表情は……寂しそうで、初めて彼を見た時と同じ顔だった。
「えっ?な、何がですか?」
「……とぼけないでよ!」
彼の声に、思わずビクッとしてしまい……俺は普通に吃ってしまった。
「……えっ…、あの……」
「……誰に頼まれて、こんな事してるの?」
その瞬間……自分でも血の気が引いていくのが分かった。
「ち、……違っ……」
「…どう?楽しかった?好きでもない、しかも男と付き合ってるフリするなんて。辛かったでしょ?……あ、それとも嘲笑ってた?馬鹿だなって。」
「違いますっ!そんな風に思ってなんか……」
「何の言い訳も聞きたくないよ。……だって、事実として翔君が裏で僕の母親と繋がっていた、っていうのがあるんだもん。……人の心を軽いアルバイト感覚で弄んで、どうだった?感想、聞かせてくれよ。」
「…………っ……」
一気に痛い所を突かれて……俺は泣きそうになっていた。
―――俺には何も泣く権利なんか無いのに……。
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