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彼が、僕の顔を捉えたまま……僕の目の前で止まる。
「おい、お前っ……」
「リンさん。」
懐かしい声で、僕の名前を呼ばないで。
そんな、優しい声で……僕の心を掻き乱さないで。
「何で名前っ……」
「……ごめん、シュウちゃん。先行っててもらえる?後から行くよ、すぐに。」
そんな僕の様子を見て……シュウちゃんは怪訝そうに彼を見てから僕達の目の前から姿を消した。
―――空気を読むシュウちゃんに救われた。
「……誰ですか?早くしないと、入学式始まっちゃいますよ。」
「…っ……、リンさんはあくまでも他人のフリをし続けるんですね。」
「……他人のフリって、他人でしょう?」
「……分かりました。じゃあ……」
そう言うと、僕の手を思いっきりギュッと握り締めた。
「ちょっ……何するっ…!」
「……相澤翔〈アイザワカケル〉はもう既に死にました。この世には居ません。」
そう言ってニカッと眩しい程の笑みを浮かべ……僕は思わずその笑顔にまたやられた。
「……初めまして、大学1年の相澤翔汰〈アイザワショウタ〉です。よろしくお願いします。」
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