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「……そう。」
―――もう僕には関係の無いこと。
改めて名前を聞かされたって、受け流せば良い。
「……名前、教えてくれないんですか?」
「……何で?もう知ってるんでしょ?改めて聞く必要が何処にあるの?」
「…あれ?リンさんは、俺と他人のフリをするんじゃなかったんですか?だったら、そこは筋を通してもらわないと。」
彼が、いたずらっぽい表情で下を向いてる僕の顔を覗き込んでくる。
―――思わず、チッと舌打ちをしそうになった。
「……黒瀬凜太朗。僕の事は黒瀬って呼んで下さい。」
「え、凜太朗さんじゃダメなんですか?」
「下の名前で呼ばないでくれよ!」
僕は思わず、声を張り上げてしまっていた。
目の前の彼は、驚いた顔をしつつも…少しだけ寂しそうに笑った。
「……分かりました。じゃあ、よろしくお願いしますね。黒瀬さん。…俺、入学式行きますのでこの辺で。」
遅れて入学式会場に向かう後ろ姿を、目で追い掛ける。
―――あの頃より、少しだけ大人っぽくなった彼は……やっぱり目に毒だ。
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