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「そうだよ。それがどうかした?」
―――あくまでも淡々と、僕は応える。
……決して、声が震えないように。
「……それでも…」
彼の声が、震える。
「俺はっ…!!リンさんが好きです!!大好きですっ!!!」
夜の道のど真ん中。
彼が恥ずかしげもなく、叫ぶ。
「……っ…!」
けれども僕は、振り返らずにそのまま歩き続けた。
「……いいの?彼の事、あんな風に無視して。」
「……いいんです。」
「じゃあ、何で泣いてんの?」
「……えっ…?泣いてる……そんな事……」
自分で、頬を伝う涙を拭う。
「……あはっ…何で泣いてんだろう……ごめんなさいっ…」
ゴシゴシと、服の袖でとめどなく流れる涙を拭っていると……菅原さんに腕を掴まれた。
「……そんな強く擦ったら、痛いだろ?目にも悪い。」
彼の指が……僕の目尻を優しく撫でた。
「……ふっ……っ…、」
「泣きな、俺が慰めてやるから。」
―――その声は、僕の固まった感情を解してくれるような優しさを持っていた。
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