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半ば強引に連絡先を交換させられ、新しく『菅原慶太』という名前が加わった。
「へぇ、黒ちゃんの名前…凜太朗って言うんだ。意外だなー。」
―――名前……教える気無かったのに…。
「でも、俺…これからも黒ちゃんって呼ぶから。多分……黒ちゃんの事、リンとかって呼ぶ人多いんじゃない?さっきの男の子も『リンさん』って呼んでたもんね。」
「……そうですね。」
「うん、だから俺だけ黒ちゃんって呼んだら…何か特別な感じしない?」
「?いや、別に……」
「もう、釣れないなぁ。まぁいいよ、今日のところは。またね、黒ちゃん。」
そう言って、菅原さんは僕の頭にポンッと手を置くとニコリと綺麗な笑顔を見せてそのまま去って行った。
「ただいま…」
「遅かったな。飲んでたのか?」
「……うん。」
2年契約だった前のアパートから出て、シュウちゃんのアパートで暮らしていた僕は、帰って来てそのままシュウちゃんにもたれかかった。
「あんまり飲むなって言っただろ。……でも、どうしたんだ?」
「……何でもない。」
「……?リン?どうしたんだ?」
「……スー…スー…」
「…お前さ、俺の気持ちも考えろよ……」
―――そんな事を呟いていたシュウちゃんなんて眠りに落ちた僕には知る由もない。
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