第5章

21/45
前へ
/231ページ
次へ
彼を思い出す度、苦しくなるけど……それと同時に温かくもなるんだ。 ―――分かってる。僕が、未だに彼の事を好きだって事ぐらい。 けれど、その感情に振り回されてはいけない。彼には彼の人生がある。 僕と関わったせいで、彼は自分の道を間違えたんだ。だったら、その道を正してあげる必要が僕にはある。 ……彼ならまだ戻れる。 女子からモテモテで、何一つ生活に不自由していない彼なら。 だから、早く……僕を嫌いになって欲しい。 僕を好きだなんて、結局は嘘だったって気付いて欲しいんだ。 そう思いながら、僕は眠りについた。 次の日。 今日はシュウちゃんの講義が無いので、僕だけ大学へと向かった。 「黒瀬さん。」 「……何?」 あの日以来会っていなかった彼が、唐突に僕を呼び止めた。 「ねぇ……俺のこと、見てよ。俺…黒瀬さんしか要らない。世界中の全てを犠牲にしても…黒瀬さんだけが居ればいいんです…」 「なっ……!」 いきなり何を言うかと思ったら……何でこんなに恥ずかしいセリフを…! と、思ったと同時に彼が僕の方に向かって倒れてきた。
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

792人が本棚に入れています
本棚に追加