第5章

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『目的地、左斜め前です。』 機械音が耳に入り、左斜め前を見ると……其処に建つ一軒家があった。 「……相澤君?…此処で合ってる?」 そう声を掛けると……彼は重いだろう瞼を開けて、その家を見た。 「……はい、合ってます…。ありがとうございました……。」 そう言って僕から無理矢理離れようとした彼は……フラフラっとよろめいた。 「あっ…危ない!相澤君、とりあえずもう少しついて行くから!」 「……いいです、大丈夫…です、から……。」 「ダメだって!此処まで来て……怪我されたら元も子もない!」 「…嫌です。俺ん家……ボロいし、散らかってるし……貴方に見られたくない……」 そう不貞腐れた感じで言った彼が……何だか可愛く見えた。 「別にボロくても、散らかってても…僕は気にしないから!」 そして、僕はもう一度彼の腕を肩に載せて玄関へと向かった。 彼は抵抗する気が無くなったのか、そのまま僕に身体を預けた。 玄関に着き、ピンポンを押しても……誰も出て来る気配は無い。 「……俺ん家、今誰も居ないんで……鍵…ハイ、どうぞ……勝手に入って下さい。」
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