第5章

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素直に鍵を渡され、少し嬉しくなりながら、鍵を鍵穴に差し込んでドアを開けた。 「すみません…お邪魔します。」 「……っ…、」 確かに散らかっている。 僕は、床に散乱している物を避けながら…彼を部屋へと運んだ。 布団を敷いてある所へ、彼をゆっくりと寝かせ……僕は、タオルを探しに台所へと戻った。 ―――にしても、凄い部屋だ。 ……ってか、小学校の教科書が多いなぁ。もしかして、兄弟居るのかな? タオルを見つけた僕は、タライに氷と水を入れ……そのまま彼の元へと向かった。 「タオル……勝手に借りたよ。とりあえず、冷やすね。」 「……あ、…りがとう……ございます…」 声を出すのも辛そうな彼を見て……僕は胸がきゅうっとなった。 「……お粥かなんか…作るね。あと…、飲み物とかゼリーとか……買ってくるから…」 そう言って立とうとした時だった。 腕を掴まれた。 力は、ほとんど入っていなかった。 振り解けそうな、弱々しい力だった。 ―――けど、僕にはその腕を振り払う事は出来なかった。
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