第5章

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「私、約2年前に身体を壊して……情けないんですけど。それで、翔汰には更に苦労掛けちゃって。…バイトは掛け持ち、それからまだ小さかったこの子達の面倒って……多分、本当に大変だったと思うの。」 ―――バイトの、掛け持ち…か。 僕が彼と出逢った時……彼は色々問題を抱えていたんだ。 「正直、私が離婚してから翔汰は無理している所があったの。バイトだって…無理してやってくれてるなって、あの子は何も言わなかったし態度にも一切出さなかった。でも、ある日から明らかに変わったの。」 「……え?」 「……あんな、心からの笑顔を見たのは…小学校以来だったの。で、嬉しかったから私…聞いたのよね。」 「……?」 僕はただひたすら彼女の言葉に耳を傾けた。 「『今、バイトで関わってる人が…とてもイイ人なんだ。』って、嬉しそうに言ったの。でも、翔汰は……何処か寂しそうな表情も見せた。『俺、幸せにしたいんだ。だから、近々本当の事を話そうと思ってる。』ってね。……私は結局何のことを言っているのか分からなかったけど、あんなに真剣な瞳をした息子を初めて見たの。」 「……っ、…。」 ―――息が、止まりそう。
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