最終章

3/59
前へ
/231ページ
次へ
「なぁ、兄ちゃん。」 「……何だよ。」 「……あの人、なんでしょ?兄ちゃんを変えてくれた人は。」 そう呟いた來夜を、俺は思わず凝視してしまった。 「なっ…何で……」 「……何となく、そうだったらいいなって…思っただけ。」 「來夜……。」 「……俺さ、あの人なら良いと思うんだ。兄ちゃん…好きなんでしょ?黒瀬さんの事。」 ジッと見つめ返してくる來夜の瞳に耐えられなかった。その瞳は澄んでいて……グラグラと揺れ動く俺の表情をしっかりと捉えている。 「俺は……」 「ただいまー……って、あれ?翔汰、起きたの?」 ―――母さん……タイミング……。 「あれ?そして、黒瀬さんは?今日、泊まってもらうはずだったのに……」 「黒瀬さんは、何か用事が出来たって言って走って帰ったんだ。」 來夜が淡々と事実を述べる。 「あら、そうなの。残念だわぁ…せっかく朝ご飯一緒に食べようと思ってたのに。」 ―――何か、やっぱり……リンさんって凄い。 俺が知らない間に……家族全員虜にするなんてっ……!!
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

792人が本棚に入れています
本棚に追加