第1章

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黒瀬凜太朗。 実業家の父親と医者の母親の間に生まれたごく普通の男の子。 ―――けれども、その家庭は……普通では無く、とてつもなく冷えきっていた。 両親共、家庭を顧みない仕事中心の生活をしていて、少年は幼い頃から近所のおばさんに預けられていた。 そんな少年は幼いながらに、自分は愛されていないと勘づいていた。 仕事中心の生活を送っていた二人は、息子をどうするかということで揉め、更にお互いの怒りを爆発させそのまま離婚をしてしまった。 息子は悩みに悩んだ末、母親が引き取ることになった。 ―――それが、少年が8歳になった春頃の出来事。 少年は、まだ小学校3年生になったばかりだった。 母親は相変わらず、家にはほとんど帰らず、帰ったとしても寝に帰るだけだった。 朝起きれば、テーブルの上に無機質に置かれた封筒。 その中には、お金のみが入れられており……少年が生活面に関して苦労するという事は一切無かった。 昔から、自分で食べる物は自分で作って食べていた彼は、料理の腕前は一人前だった。
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