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黒瀬凜太朗。
実業家の父親と医者の母親の間に生まれたごく普通の男の子。
―――けれども、その家庭は……普通では無く、とてつもなく冷えきっていた。
両親共、家庭を顧みない仕事中心の生活をしていて、少年は幼い頃から近所のおばさんに預けられていた。
そんな少年は幼いながらに、自分は愛されていないと勘づいていた。
仕事中心の生活を送っていた二人は、息子をどうするかということで揉め、更にお互いの怒りを爆発させそのまま離婚をしてしまった。
息子は悩みに悩んだ末、母親が引き取ることになった。
―――それが、少年が8歳になった春頃の出来事。
少年は、まだ小学校3年生になったばかりだった。
母親は相変わらず、家にはほとんど帰らず、帰ったとしても寝に帰るだけだった。
朝起きれば、テーブルの上に無機質に置かれた封筒。
その中には、お金のみが入れられており……少年が生活面に関して苦労するという事は一切無かった。
昔から、自分で食べる物は自分で作って食べていた彼は、料理の腕前は一人前だった。
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