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彼は何の苦労もなく育った。
傍から見れば、お金があって幸せじゃん!なんて言われるかもしれない。
―――しかし、少年が欲したものは……お金なんかでは無かった。
朝、学校に行く時に『いってらっしゃい』と優しく見送って欲しかった。
帰って来たら、『おかえり』という言葉が聞こえる温かい家庭に帰りたかった。
一緒に、両親と何処かへ出掛けたかった。
―――そんな、何処にでもある普通の家庭に……生まれたかった。
唯一、休まる場所は少年にとっては学校という場であり、自分が寂しいと感じる場もまた学校であった。
彼は、ごく普通の男の子だ。
別に、女の子にモテるような容姿ではないし、いじめられっ子でも無かった。
少し頭の良い、平凡な男子だった。
友達は人並みに居たし、学校だって気が休まる場所だった。
―――けれども、運動会や授業参観がある度に……彼はとてつもない寂しさに襲われた。
友達から、親の話が出る度に……彼は苦しくて仕方無かった。
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