第1章

5/32

792人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
自分は、自分の家は……普通の家とは違う。 彼は、そう何度も痛感してきた。 その度に、泣きたい思いを我慢してきた。 ―――彼は、そんな人間だった。 中学、高校と上がっていくにつれ、その寂しさは増していったが……彼は次第に妥協していった。 『寂しい』という感情を受け入れてしまった。 そうやって、自分の本当の感情を押し込めて……見ないフリしていったのだ。 友人は居た。 けれども、『友情』と『愛情』は似ているようで違うのだ。 僕は、愛を知らないまま……誰にも愛されず、そして誰も愛す事が出来ないまま、今まで暮らしてしまった。 女子に告られたことなんて一度も無いし、僕から告ることも無かった。 そして、この歳になってまだ愛が……等とほざく女々しい男になってしまった。 ―――って、そんな事考えている暇なんて無かった事に今更気付く。 今週提出期限の哲学のレポートが終わっていなかった。 「……何だっけ、テーマ……。」
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

792人が本棚に入れています
本棚に追加