第1章

6/32

792人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
「よっ!」 ポカッと頭を叩かれて、僕の頭上から聞こえた声に顔を上げると……其処には僕の友人である斉木秀平〈サイキシュウヘイ〉が居た。 「シュウちゃん!いい所に!」 「……何だよ、そんなあからさまな態度取りやがって。」 「哲学のレポート、テーマって何だっけ?」 すると、シュウちゃんはあからさまな溜め息を吐いた。 「お前って、意外と抜けてる所あるよな。……ベーコンとデカルトの考え方の比較。思い出したか?」 ―――ベーコン……デカルト… 「はっ!経験論と合理論だね!?」 「そうそう。ついでだから……一緒にやるか?俺もまだ終わってないんだよ。」 「え!ホントに!?やった!」 僕が素直に喜ぶと、シュウちゃんは苦笑しながらも…… 「仕方ねぇな…。ほら、行くぞ。」 そう言って、僕に背を向けて先に歩き始めた。 シュウちゃんは高校からの友人で、この大学の中では唯一僕をちゃんと理解している人間だと思う。 少しつり目で怒っているように見られがちだが、本当は面倒見が良く、ぶっきらぼうながらも優しい一面がある。
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

792人が本棚に入れています
本棚に追加