第3章

29/31
前へ
/231ページ
次へ
「泣きたいの……こっちだよ?ねぇ、翔君……」 僕は翔君の潤んだ瞳を見つめる。 ―――あぁ、まだ大丈夫。あと少しだけなら……きっと涙は零れない。 「お願い、もう問い詰めたりしないから今すぐ此処から出て行って。そして、連絡先も消して。何も無かった事にして。この、数ヶ月間……僕達は何も無かった。出会った事も無い。そう思って。」 声が震える。 涙が、零れ落ちそうになる。 「……嫌、です……そんな事…俺には出来ない……。リンさんの事……忘れたくなんか、ない……」 「……止めてよ、名前でなんか…呼ばないでくれよ!早く……お願いだから…出て行って!」 「リンさんっ……」 「もう、顔も見たくない!!君なんか、大ッ嫌いだよっ!!」 声を張り上げる。 ―――こうでもしないと……本音を零してしまいそうで怖かったから。 「サヨナラ、翔君。」 そう言って僕は翔君を外へと押し出して、鍵を閉めた。 追い出した瞬間……涙がとめどなく押し寄せてきて、僕はその場に崩れ落ちて泣いた。 ―――気が済むまで、泣き続けた。
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

792人が本棚に入れています
本棚に追加