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「泣きたいの……こっちだよ?ねぇ、翔君……」
僕は翔君の潤んだ瞳を見つめる。
―――あぁ、まだ大丈夫。あと少しだけなら……きっと涙は零れない。
「お願い、もう問い詰めたりしないから今すぐ此処から出て行って。そして、連絡先も消して。何も無かった事にして。この、数ヶ月間……僕達は何も無かった。出会った事も無い。そう思って。」
声が震える。
涙が、零れ落ちそうになる。
「……嫌、です……そんな事…俺には出来ない……。リンさんの事……忘れたくなんか、ない……」
「……止めてよ、名前でなんか…呼ばないでくれよ!早く……お願いだから…出て行って!」
「リンさんっ……」
「もう、顔も見たくない!!君なんか、大ッ嫌いだよっ!!」
声を張り上げる。
―――こうでもしないと……本音を零してしまいそうで怖かったから。
「サヨナラ、翔君。」
そう言って僕は翔君を外へと押し出して、鍵を閉めた。
追い出した瞬間……涙がとめどなく押し寄せてきて、僕はその場に崩れ落ちて泣いた。
―――気が済むまで、泣き続けた。
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