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神谷さんがあきれたように言った。
「そうなの?」
渋谷さんが僕に聞いてくる。「ええまぁ」と僕は返事をした。
「そうかぁ。それもそうかもなぁ」と妙に納得して渋谷さんは何度もうなずいていた。
バーベキュー会場の中心から音楽が響いてきた。会場の中心にはレクリエーションやイベント用にステージが組まれている。これも恒例行事ではあるが、課から1チームが参加して一発芸というか何か出し物をすることになっているのだ。多くは大げさなカラオケをやることが多い。漫才やコントをやるところもあるが、実際皆酔っぱらっているのであまり難しかったり会話のテンポが速いと誰もついていけないことが多いから難易度が高い。
大体これに参加するのは新入社員や下っ端の後輩が出ることが多い。今年うちの課からは隣の部署の新入社員が出ていたはずだ。内容は確か、新入社員とその先輩達でカラオケをするはずだった。
「で、本当のところはどうなの? 気になる人もいないの?」
渋谷さんが他の人たちのところに行ったのを見計らって言った。
「どうですかね」
「ああ。いるのね」
誤魔化したつもりが断定されてしまった。実際、気になる人はいる。隣の部署の中村さんの事が気になってはいた。神谷さんほど綺麗な人ではなかったけれど、可愛い人だった。
隣の部署に用事があるときに、受付にいることが多いので面識はあると言えばあるが、時折廊下で会っても挨拶を交わす程度の関係だ。ただ、ある時たまたま見えた友人と話している時の笑顔が妙に胸打たれたのだ。
「渋谷くんじゃないけど、気になる人がいるなら遠慮しないほうがいいとおもうよ」
「できるなら、僕もそうしたいと思うんですけどね」
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