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私が彼を指差して叫ぶのとほぼ同時に、彼が私の口を塞ぐ。
「すいません藤田さん。碓氷さんの体調が優れないようなので、運ばせでいただきます」
めちゃくちゃ元気だよ?
その場にいた全員がそう思ったはずだが、相手は新島財閥の副社長であり、いずれは社長になる男。
誰も反論できるものはいない。
「は、はいありがとうございます。申し訳ありません」
「フゴッ、モゴモゴッ、ンーッ!」
私の叫びは誰にも伝わらず、新島に強制連行されて会場から去る。
こんな時なのに、生クリームパスタが食べたかったなと、呑気に思う自分もいた。
「一体どーいうつもりなワケ、にーじま!」
連れてこられたのは、ある個室。
ベッドもソファもお風呂も、バルコニーも付いている、私にとってはスイートルーム並みの部屋。
初めて入るこんな場所で、私は仁王立ちになっていた。
「あのままだったら叫んでただろ、絶対」
「だからって連行は無いでしょ!初めてなのに、全員に顔覚えられた自信ある」
「そのまま残ってても、質問攻めにされるだけだよ俺もお前も」
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