そして、今

2/2
前へ
/10ページ
次へ
「あはは、可愛いな、夏海」 私が旦那様になろうとする彼に、私の忌まわしい夏の思い出を話すと、彼は笑ってそう言った。 「そんな笑わないでよ、私なりに真剣に夏なんてなくなればいいと思ってきたんだから」 そう、こうして思い返してみれば、どれもたいしたことないエピソードなんだけど。 それでも、私は私なりに真剣にその時は悩んできた。 「大丈夫、夏海。これからは、俺がずっと誕生日のお祝いをしてあげる」 ふっと笑ってそう言う彼。 「夏海の黒くて健康的な肌が俺は好きだし」 結局、水泳部を引退しても、たいして白くはならなかった肌を撫でながら。 「その事故で夏海が生きてて本当に良かったよ、それにそんな男に初めてを捧げないでいてくれて本当に良かった」 結局、大学時代の彼とはそのまま別れて。 その後出会ったのが今の彼だから... 初めての相手は今の彼になる。 「それに、今年の夏は最高な夏になるだろ?」 そう、今年の夏。 私は彼と結婚するんだから。 夏なんてなくなればいいのに!!なんて、私はもう言わない。 幸せな夏にするんだから!! 私、夏海、夏生まれの女。 この夏、幸せな夏にします!!
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加