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「あの馬鹿め、後で灸を据えなければならんか」
薄暗い地下室のような場所。
そこには数多のモニターが配置され、各々が何故か“地球”を映している。
モニター右下の何かの数値を表すグラフのようなモノが絶えず変動しているくらいで、地球自体に差はないように見えた。
が、部屋にいる女性
本郷 一(ホンゴウ ハジメ)は、苦虫を噛み潰したような邪眼で、モニター群を睨み付けた。
「境界面が安定していないな…この世界達も、潮時か…」
そう呟く彼女の掌には、機械じみたバックルが握られている。
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ふと顔を上げると、外はもう夕陽が落ちかけていた。
「よし、終わったし帰るか…腹へったなぁ」
早々にデスクを片付けると、俺は部屋を出る。
エレベーターの1階のボタンを押して、ドアがしまってから数十秒。
開いた先にはエントランス。
よく見かける受付嬢に軽く会釈すると、外の世界へと踏み出し…
「またかよ夏海」
例のごとく夏海のお出迎えである。
「ベ、別にいいじゃないですか…!暗いとなにかと危ないし、最近物騒ですからね!来斗君にだってボディーガードくらい…」
「それはあれか?俺がボディーガードくらいしか能がないって意味か?」
「べべべ、別にそんなこといってないです!それよりご飯!ご飯いきましょう!最近美味しいイタリアンの店を見つけたんです!」
…付き合わなかったらぶんむくれそうだな。
渋々ではあるが、夏海への同行を決意する俺であった。
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