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「はぁ~」
桜は黒金の姿が見えなくなった途端、しゃがみ込んで長い溜息を吐いた。
ほんの数分の出来事だったのに、すごく長かった気がする。
一気に肩の力が抜けた気がした。
「頑張ったじゃん」
後ろから声をかけられ、振り返ると教室のドアに如月佳奈がいる。
「佳奈ちゃん!! 私、がんばったよね!!」
勢いで抱き付いて如月は桜の抱きとめるとよしよしと背中をさすった。
「うんうん。頑張ったよ。普段あんなこと言わないもんね」
「うん……」
こくりと頷いた桜の目からポロポロと涙が溢れ出た。
「あ、あれ? なんでだろう」
桜は慌てて制服の袖で涙を拭った。
でも、涙は決壊したダムのように止まることを知らない。
そっか、私、失恋したんだ。
今になって実感がわいてくる。
やっぱり悲しいや。
「か、かなちゃ~ん」
名前を呼んだら手を広げておいでと言ってくれた。
自分の気持ちよりもあんな切なそうにしている高宮くんを見ているのは辛い。
こっちまで苦しくなってしまう。
振られるって分かっていたけれど、いざ本人からその言葉を聞いたら、心にぐさって刺さった。
悲しいし、苦しいし、辛い。
だけど、告白をしたことにも黒金くんを好きになったことにも後悔してない。
だからこそ、二人には幸せになってほしい。
心からそう思う。
桜は如月の胸の中でわんわん声を上げて泣きながら、黒金くんが高宮くんを思い出してほしいと心の底から願った。
二人を見守ろう。
私ができるのはここまでだから。
あとは、二人が進まなきゃ。
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