第1章

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駄菓子屋の前にたむろす小学生の群れと二人の女子高生、そして主婦。 近くのガキが、私のことをじっと見つめている。 何だよその目は。主婦は駄菓子屋に来てはならぬというのか。 主婦には夏休みがない。だから忙しい合間を縫って超プレミアムアイスバーに癒しを求め、くそ暑い中日々買いに来ているというのに、こんなくそガキどもの夏休みのせいで、その憩いの時間を邪魔されてたまるかよ。 夏休みを作る夏なんてなくなればいいのに。 「夏なんてなくなればいいのに!くそガキどもの夏休みなんて消えればいいのに!ガキは私の子以外可愛くねえんだよ!」 気付けばそう、大声を上げていた。 駄菓子屋前にある目は全て、一斉に私を射抜く。 そのタイミングで、駄菓子屋の店長が超プレミアムアイスバーを10本持って現れた。 それが食べたかっただけなのに。 思い切り毒づいてしまった今、超プレミアムアイスバーを買いに手を伸ばすのはさすがに気が引けた。 このおばさんアイスが食べたかっただけかい。なんて恥ずかしすぎ。 超プレミアムアイスバーに気を取られているガキの目を盗み、そっとその場をあとにする。 さようなら、超プレミアムアイスバー。 夏なんて、なくなればいいのに。 ふとすれ違った男子高校生、その顔を見た時、あら、と思った。 右の目元に泣きボクロがふたつ並んでいる、大層なイケメンだったのだ。 イケメンを拝めたこと、それは感謝するぞ、夏。
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