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未熟なままに滅んだのであろうか。 その姿の片鱗を探して二人は尚も慎重な調査を続ける。 「扉が有るな。大きさは俺達と変わらない生命体だったみたいだ」 「ああ、けれど向こう側の空間はこちらに比べて随分と細長い。高周波ブレードを渡してくれないか」 ディより受け取ったブレードと自分のブレードを慎重に扱い、ニチは扉をその縁に沿って切り出して行く。途中、錆びの粉が紅い雪の様に床の上に舞い落ちた。 「離れて」 指示に従い後ろに下がったディは、閉ざされた扉の向こうを照らし出すべく明かりを向ける。 滑らかに切り取られた扉は音も無く外され、床へと横たえられたが、扉の裏面は錆びを浮かす事もなく白いセラミックの肌を見せていた。 同時に煌々とした明かりが、細長いと告げられていた空間を奥まで真っ直ぐに照らし出す。 そこだけは厳重に保護されていたのか、たまたまの奇跡だったのか、内部に歪みは見られず塩の堆積も見られない。 そして、ただ一つの黄金の輝きが有った。 「何だ? 金は単体で存在出来る元素だけど」 「表面に何か描かれているな」
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