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船のコンピューターがはじき出した最も少ない回数、つまりは最短で故郷の惑星へと辿り着ける航路を選んで進む二人は、噂でしか聞いてないそれに遭遇していた。 驚くべき事に、それは並走する様にニチとディの乗る船に追随して亜空間を進む。 既に行程の半分は進み、調子も戻っていたディは強い興味を示した。 興奮は、ニチには理解出来ないほど強いものだった。 上ずった声で懇願し、あろう事か並走する幽霊船に乗り込みたいとさえ言い出す。 「分かるんだ、ニチ。これはチャンスだ。あれは間違いなく祖先の船だ」 普段ならリスクの大きさを見極め、そんな馬鹿げた事は言わないディが狂おしく、それこそ本当に壊れたかと思える言葉を吐いて頼み込む。 「俺には聞こえているんだ。あの船からの声が。今まであの幽霊船を見た人達に祖先の船だと言う人が居たのも分かる。朧な輪郭でしかない、メッセージを受け取っていたんだ」 「ディ、調査をしたいのは分かる。だが、装備は不十分だし、何より幽霊船が何時までも同じ空間を航行してくれる保証はない」 「だから早くあの船に乗り込みたいんだ。あそこには祖先が居る」 口論の果てに、ディはついに一人で船外へと飛び出して行った。 突き飛ばされたニチが、ほんの僅かの間、意識を失っていた際の行動。 船の人工知能へと、追随する船を追えと何処かずれた指示を出しディを追った。
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