15/15
前へ
/19ページ
次へ
「あの惑星の……地球の変動の激しさに自分達が滅ぶと予測して、生き残る可能性を外に、宇宙へ求めたと言うのか」 「そうさ、だから旅に出たんだ。地球が滅ぶ可能性の大きさより、宇宙へ旅立つリスクの方が少ないと信じて。この人達は何の遺伝子操作をしないままにな」 天井より立ち上がったディの手が、傍らの何に使われていたか解らない機械に触れる。 途端、語り掛ける声があった。 それは余りにも希薄な意志の残留。 流れ出る言葉を理解は出来なかったが、哀切に満ちた幽かな響きは二人の胸を打つ。 声は助けを求め、生き延びたいと求めていた。 『聞こえますか、私はルーナ。お願いです。誰か手を差し伸べて。私達はこの空間から出られません。誰か、お願いです。私達を救って下さい。……聞こえますか。誰かお願いです。手を差し伸べて下さい。私達を助けて下さい。……誰か。……誰か』 「……戻るよ、ディ。まったく、二つも大掛かりな調査の要請をしなくてはならないとは忙しいぞ」 微かな声の余韻を噛み締め、ニチは共に旅する同じ志しを持った仲間へと手を差し伸べた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加