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塩は純粋な無色透明の結晶ではない。
堆積して行く途中で閉じ込められた、岩石や微小な創造物と見られる破片。そして脱水され、見事な塩蔵物と化した、比較的新しい小型の生命体がぺっちゃんこな姿で現れる。
「こちらは植物かな? 何等かの生物の刺かな?」
鋭い針状の欠片を含む塩を摘まみ上げ、ニチは強い陽射しの中に翳す。
その隣に、長く引き摺ってきたホースのノズル部分をチェックしながらディが並んだ。
「よし、表面の水を取り除けるぞ」
掘った側から溜まる濃い塩水にノズルを差し込み、ポンプを稼働し始めたディがニチの摘まむ塩の塊を覗き込む。
左目に埋め込まれたカメラに連動し、情報が彼の脳へ送り込まれて来る。
「植物。何だろうな? 気を付けろ、まだ在るとしたら怪我するぞ」
「僕の肌はそんなやわなものじゃないさ」
応えるニチの肌は成る程、黒く硬質ながらも何処か柔らかな輝きを放っている。
「特殊カーボン製だったな」
「むしろ気を付けるべきはディさ。君の肌は何の加工も受けていない。それで良く探査チームに入れたよ」
「俺も不思議だ。まあ、情報のインプット、アウトプットの負荷に耐えられる脳構造を持っているからだろうな」
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