chapter1

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ビルに入るとそこは普通のエントランスだった。 「いや、普通…でもないな」 普通の人間に混じって、顔にステンドグラス模様を浮かび上がらせた人間(ファンガイア)がいる。 普通に談笑したりしているところを見ると“共存”というのはおおよそ成功しているのだろう。 人々を後目(しりめ)に俺はPRESIDENT ONLYと書かれたエレベーターの扉を見つけ、近づいていく。 「お待ちください。このエレベーターは王の専用になります。失礼ですがアポイントは…?」 わかりやすい警備員の人間(ファンガイア)が放つ常套句。 「用はある。だが、アポは取ってな「お引き取り下さい」 …デスヨネー。 「当たり前じゃないですか」 夏海も警備員側か。 だが、少し考えてみよう。俺はこの世界の王であるキバを、ゆくゆくは世界そのものを破壊するために此処に来た。 「…此処で素直に帰ったら何しに来たんだって話だな」 「…なに?」 不遜な態度に苛立ちを覚えたのか、警備員の険しい表情に虹色が入る。 「おー…ヤル気だな」 「悪く思うなヒトよ」 その言葉がトリガーだった。 警備員の姿がライオンのような姿、ライオンファンガイアへと変わる。 「分かりやすくて俺好みだ…。」 ニヤリと笑いバックルを腹に押し当てる。 『Legend driver!』 「変身…」 『Rider change…LEGEND!』 金色の奔流とともに俺もまた、あの時の姿、仮面ライダーレジェンドへと変わる。 「…貴様、何者だ?」 「仮面ライダーレジェンド…退()けよ、俺はアンタらの王に用がある」 「通す訳にはいか…「遅ぇよ!」 立ち塞がる兵士の言葉を待たず、俺は剣を振り抜く。 その刃は奴の腹を斬り、火花を散らした。 「ーーーーーーーーー!」 あがる悲鳴。 逃げ始める人々。 その様子を見た夏海の困惑は推して測るべしだった。 「来斗君…これじゃ…まるで私たちが…」 その先の言葉は言わなくてもわかる。 だが、既に賽は投げられた。 「チュートリアルはさっきので十分だ。」 刀身に収まったホルダーからカードを引き抜き、ドライバーに装填。 『KAMEN RIDE…HIBIKI!』 紫炎に包まれた俺の体は濃紫(こいむらさき)に紅い隈取を持った(ライダー)、響鬼へと変わる。 「…さーて、獅子と鬼。力比べといこうか。」 実際は力比べにすらならなかった。 「…っ!」 腹に突立つ爪。 そのまま奴を片手で持ち上げる。 「ぐ…ぉおぁああああ!」 苦痛に叫ぶ獅子。 それを誰もいなくなったエントランス中央にぶん投げ、叩きつける。 「どうした門番…大事な入口ががら空きだぞ。」 「と、通す訳には…」 立ち上がるも既に虫の息。 「…ふーーー。」 生憎、生殺しというのは趣味じゃない。 「…終わらせるか」 額にある鬼の彫刻(レリーフ)に触れる。 そこから現れたのは細身の日本刀という他ないものだった。 「はぁああああ…!」 吐息とともに、刀身に宿る炎。 「待っ…ーーーーーーーーー!」 振り抜かれた一刀は、獅子の命を刈り取り その身体は、虹色となって霧散した。
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