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そう言い俺は軽く笑ってみせる。
「強いね……」
「そういやミリアの家族は?」
「……わからない」
「へ?」
俺は一瞬理解できなかった。
「実は私も一人なんだ、気付いたらここに流れついてて、しかも名前以外何も覚えてないの……」
ミリアはリンゴの皮を剥く手を止めてうつむいた。
悪いこと訊いちゃったな。
「ごめん……」
「ううん、全然気にしてないし」
ミリアは無理矢理笑顔をつくって顔をあげた。少し引きつった笑顔だ。
「はい、リンゴ」
「あ、ありがとう」
俺が皮を剥かれたリンゴを受け取った瞬間、甲高い音が耳を刺した。
「キャッ」
ミリアは耳を塞いでうずくまった。
ミリアの頭の上にはガラスの破片がふりかかる。音は窓が割れた音だったようだ。床には石が転がっている。
「な、なんだ!?」
「もういや………いやいやいやいやいや!!」
「み、ミリア?」
俺がミリアに触れようと手を出すと、ミリアはそれを振り払う。
「いや……来ないで……なんで私だけ……」
ミリアは何かを念仏のように呟いている。どうやらパニック状態に陥っているらしい。
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