六章

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 十七年前。ガラムは今と変わらず、(みな)に慕われる長老だった。昼寝や散歩をこよなく愛し、一領民(いちりょうみん)から長老にまで出世したということもあり、里の者からの信頼や人望も厚い。王族でない者が長老にまで出世したとあって、ガラムはとても頭がよかった。  だが、頭がいいからこそ、普通ならば考えもしないことが頭に浮かんだ。それは、人間と魔族が交わり、子供が出来たらどんな子供が出来るのか、ということ。黒月下の長い歴史の中でも魔族の血に人の血が混ざったことは一度もないということもあり、好奇心の強いガラムはその結果がどうしても知りたかった。自分の目で見てみたかった。そしてガラムは、己の好奇心のままに動き始めた。その思い、行動が、(のち)に自身を強い後悔と罪悪感で苦しめることになるとも知らずに。
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