六章

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 ある日、ガラムは自身の部下から一人を選び、人間界から人間の女を一人連れてこさせた。今回の人体実験に利用するためだ。ガラムは部下の若い男、ダーナ・ガロウにその女と交わることを命じた。ダーナは最初はその命に戸惑っていたが、長老の命ということもあり、断るわけにもいかずにそれを承諾した。女はもちろんそれを拒絶していた。彼女の恋人と思わしき異性の名をずっと呼んでいた。その者が助けに来ることなどまずないと分かっていたから、ダーナは人知れず顔をしかめることしか出来ない。ガラムは実験の結果のことしか頭になく、そんな二人の辛さや苦しみなど何も気付けなかったのだ。  やがて、女はダーナとの子を身籠もった。生まれてきたのは女児で、特にこれといって人間としても、吸血鬼としても変わったところはなく、しばらくは様子見ということになった。女児の髪は母親と同じ黒髪ではなく、女と交わったダーナと同じ茶髪だった。女の恋人は今現在付き合っている男しかおらず、その恋人も女と同じ黒髪なので女児は間違いなく女とダーナとの子供だということが判明。
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