六章

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 そんなジル達の動揺に気付かず、凪はただその人を見つめていた。 「お、父さん……です、か?」  震える唇で目の前の人に問う。その言葉に自然とジル達も二人に視線を集中させる。男はやがてゆっくりとそのフードを取り、フードに隠されていた素顔を曝す。 「……ああ」  初めて見た父の素顔はとても優しそうな人。そんな印象を凪に与えた。凪と同じ茶色の髪を鎖骨ほどの長さまで伸ばし、瞳も凪と同様に髪色のそれだ。自分達が行った愚かな実験によって無理矢理この世に生を受けた命、だということもあり、ダーナの凪を見る眼差しは優しさと同じくらいに悲しみや罪悪感などの色が(うかが)える。
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