序章

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 気付いたときに感じたのは『冷たい』だった。私はなぜか冷たい所で倒れている。それがコンクリートの上なのか、それとも氷の上なのかの判断は難しい。ただ、背中と後頭部が冷たいと感じていたので、おそらく仰向けに倒れている。  身体を起こそうにも身体は動かない。重たい瞼を開けてみる。周りは暗く、何も見えない。視力は良かったはずなのだが、本当に何も見えない。耳を澄ましても何も聞こえない。何かの衝撃で視力と聴力がおかしくなっているのだろうか。それとも、本当に真っ暗で何もないのだろうか。  なんとか周囲の雰囲気を感じ取ってみたが、どうやら近くには誰もいないようだ。助けを呼ぼうと声を出そうとしたが、声が出ない。喉の奥までカラカラに乾いていて、ひゅう、ひゅう、とか細く吐く息の音しか出なかった。  どうして私はこのようなところで倒れているのだろう。何も覚えていないし、私の身体がどうなっているのかさえ、正直分からない。身体が痛いのではなく、動かない。だからといって肌の感触からして、何かに拘束されているわけでもなさそうだ。ただ単に仰向けに倒れているだけ、のはずだ。それよりも、私の視界は少しぼやけだしてきていたので状況はかなりマズイ気がする。後、なんだか嫌な予感がする。
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