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『誰か、助けてください!』
今の私に出来ることはただ一つ、心の中で助けを呼ぶこと。
『助けて助けて助けて!』
何度も呼んでみるが反応はない。なくて当然なのかもしれない。そもそもここがどこか分からないし、自分がどういった状況なのかも分からないのだ。助けを呼ぶなんて、馬鹿げているのかもしれない。
泣きそうになったが、それでも私はあきらめずに何度も呼び続けた。
するとバタバタという複数の足音が聞こえてきた。どうやら聴力は失っていなかったようだ。
「うわ、コイツ生きてんのか?」
「生きていますよ、たぶん。すみません、生きていますよね?」
私の近くに2人の男が来たようだ。私は男の声が聞こえた方に眼を向ける。けれど、視界がぼやけて顔がちゃんと見えない。代わりに耳に意識を集中させる。
「生きていたら、どこか動かしてくれませんか。聞こえていればの話ですが」
私はなんとか口を動かす。
『生きています!』
声を出そうとしたが、やっぱり声は出ない。でも、相手には伝わったようだ。
「ほら、生きているじゃないですか」
「でもよ、かなりひどいぜ。どうすんだ?いっそ殺しておくか?」
私はぎょっとした。この男は私を殺す気でいる。私は恐ろしくなり逃げたいと思ったが、身体は指の1本も動かせない。もし身体が動くのであれば、今すぐ逃げ出したい。
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