後悔も涙もキスで潰して

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横になってる片方と、完全にひっくり返ってるもう片方の靴。 だらしないと言われても、今は気にしない。 そのままにして向かったリビングは、まだ日が暮れきってないせいか薄っすらオレンジ色。 雨はもう、上がっていた。 「はい、凜はここ」 「こっちでいいです」 「だめ、ここ」 引っ張られるがままに座らされたのは、ソファーの上の筈なのにもう一つ宮瀬の膝が間に挟まれていた。 重たいだろうと気を遣って真横に移ろうとしても、お腹に回された腕がそれを許さない。 「あー、落ち着く」 「私は落ち着きません・・」 「どうして?あ、こっち向きの方がいい?」 「ちょ、っっと!!」 くの字に悪あがきをしていた身体がくるっと回って、意図も簡単に目の前に宮瀬の顔が見える体制に変わった。 吃驚してその肩にしがみ付いた私の背中をトントンっと叩いて宥めると、ゆっくり抜けた力にそっとその肩を押す。 「い・・っ!」 「頬もふにふにしてて可愛いし、言葉足らずで太ったって聞いたけど、別にそれでどう思ったなんてないから」 やっと大人しくなった私を見て一笑した宮瀬が、唐突に頬を抓った。 本当に軽く、痛くもない力でつままれた頬は少し伸びて情けない声を漏らす。 そしてすぐ離されたその手は頬をゆっくり撫で、大きな掌が私の顔を包み込む様に掌の熱が顔を覆った。 「俺は別に凜の外見に惚れただけじゃないから、見た目が変わってもずっと好きだよ」 「・・そですか」 「素っ気ないね」 「怜に・・言われたんです」 大きな掌は私の掌二枚合わせてやっと包んだ気がした。 目を閉じ、その体温を感じる様に深く呼吸をすると落ちない様に支えててくれた宮瀬の左腕が私の髪の毛を梳いた。 「女の子は日によって浮腫んだりするから気にするなって」 「それで?」 「その後にね、透さんは私を見過ぎだって」 「なるほど、心底お前の友達が怖く感じるよ」 思い出して笑ってしまった私を怒らず、否定もしない宮瀬もまた薄く笑った。
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