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どうでもいい事で怒って、少しだけ泣いて、気まずくなって後悔もして。
でも、帰る場所には待っててくれる人がいる。
今度は私から近づいた顔はあっさりその唇を受け入れ、瞑った目裏は真っ暗なのに涙が零れた。
何度も触れたはずの唇なのに、凄く熱く感じるのは何でなのだろう。
手放したくないから、熱く感じるのだろうか。
「ん、っ・・う」
「また苦しかった?」
「どうでしょう?」
頬に伝ったものをゆっくり拭いとると、わしゃわしゃと頭を撫でてて私の背中を力を込めて押し込むと、ほら、その大きな胸板に私の体はすっぽり収まってしまう。
暖かさに眠ってしまいそうな中、宮瀬の首元に両腕を回した私はそのまま惜しみなく体重を預けた。
「凜、お腹空いてないの?」
「空きました・・」
「早めに夕食を摂ろうか」
「・・はい」
「でも、その前に」
力の抜けた身体のまま交わす会話さえ眠気を誘い始めた時、折角寄り添っていた身体が急に離される。
驚いてしまった拍子に目を丸くする私を見て口角を上げた宮瀬は、宥める様に時間を空けた後、またその口を開いた。
「もう一回、キス、させて」
そして、今度は逃がさないと言う様に間髪入れず私の声を掻き塞いだ。
Fin
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