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「聞いてる分には面白い位くだらないけどね」
飛び出した際に片手に持った携帯はたった一人の名前を表示し、緑色の通話アイコンを画面の中で揺らした。
私の涙声に焦った怜は、短く伝えた場所にすぐに駆け付けてくれた。
「私も・・そう思う」
「感情的になるのも仕方ないけど、帰りにくいわねーそれは」
「うぅ・・言わないでよ」
「まぁ、偶には良いんじゃない」
目元が少し赤くなったまま入ったカフェは気が紛れる程度には混み合っていた。
怜が近くにいたのか、はたまた誰か別の人と一緒に居たのかは分からない。
そのまま落ち着いて話せる場所を探して入ったこのカフェで、話した事の成り行きに眉間に皺を寄せ頭を押さえた。
それは、大よそ呆れそのものだ。
「ねぇ、私太ったかな・・?」
「んー、わかんない」
「分かんないって・・」
「察しなさいよ、分からないって事は変化が無いって意味よ」
頬を触りながら、言われればふっくらしたかもとか。
腕を抓ってはもう少し細かったかもとか。
鑑みれば確かにと思える範囲で傷ついていた心は、他人目線の確証を求めた。
「大体ね、女なんだから日によって変わるでしょ?」
「そ、そうだけど」
「生理前とか浮腫んだり、前日に塩分摂り過ぎただけ顔なんてパンパンよ。それに便秘だってあるのよ?」
「うん・・」
「男はね、そうゆうの感じにくい生き物なんだから気にしなくていいの」
宮瀬の言葉とは違う説得力のある怜の言葉に小さく返事することで精一杯の私。
ズズッと音を立ててグラスの中身を飲みきった怜は、それをテーブルに置きながら真っすぐ私の目を見据えた。
「あんたらがそんな事で喧嘩するとは思わなかったわ」
「・・・」
「凜は太ったの言葉を真に受けて気づいてないかもしれないけど」
空調の効き過ぎたカフェは薄着の今時期には肌寒く、冷えた腕を摩りながら宮瀬の言葉を思い出す。
そしてぷにっと摘んでみては瞼を伏せた。
そんな私を見て呆れ交じりに溜息を吐いた怜が、頬肘を付いたまま口を開いた。
「毎日の様に会ってて変化が分かる方がおかしいのよ」
「どうゆう事・・?」
「見過ぎなのよ、宮瀬さんが凛の事!」
肩の力を抜いて言い聞かせる様に吐き出した怜の声が真っすぐ鼓膜を叩いた。
そして怜はその後小さく、言わせるな馬鹿と呟いたが、先に言われた言葉に今度は頬を赤くした私にはもう聞こえなかった。
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