一章 事件の始まりは薄紅色

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一時限目の終了のチャイムが鳴り響く。数学の山下先生が授業の終わりを告げる。 私はフラッと、友人の佐竹由紀(さたけゆき)の席まで歩いていく。そこでノートに何やら書き留めている由紀の机に腰掛け、そのまま話しかける。 「由香理・・やっぱり来ないね」 クラスメートである本城由香理(ほんじょうゆかり)の、誰もいない席を見ながらそう話すと、それほど興味がないのか、由紀はそのままノートに書きながら返事をする。 「そうだね。でも風邪か何かじゃないの?」 「今日は放課後に由香理と約束してたんだよね。なのに何の連絡もなく休むなんておかしくない?メールしても返事こないし。やっぱり変だよ。由紀は何か聞いてない?誰か知らないかな・・・」 物書きに集中したい由紀は、一方的に話す私に、ちょっとイラついたのか。 「式部瑠璃(しきべるり)!ちょっとうるさい!書き終わるまで待ちなさい!」 由紀に怒られた私は、しょげ込んで、少しいじける。そんな私の前に由香理の親友である、源聖羅(みなもとせいら)が通りかかる。 「源さん。ちょうどよかった。今日って由香理は、どうして来ていないか知っている?」 そんなに摩訶不思議な質問でもないはずだけど、源聖羅はどうして私に聞くのって感じの冷たい反応。 「知らないわよ。私が聞きたいくらいだよ」 「え・・でも源さんと由香理って親友でしょう?」 これは完全に余計な一言だったのか、私は源聖羅を完全に怒らせることになった。 「どうしてあなたに、私と由香理の関係を決めつけられないといけないわけ?」 源聖羅は早足でそのまま教室を出て行く。 「あーあ、怒らせたわね」 由紀にボソッと言われる。頭を抱え込んでさらに落ち込む。 「私ってどうしてこうなのかしら・・・一言多いよね」 「わかってるんなら治しなさいよ」 「反省はしてるんだよ」 「そうは見えないのよ」 そんなやり取りをしていると、教室にすごい勢いで男子生徒が走り込んで来る。その生徒の一言は、ざわついた教室を静まり返し、凍りつかせるには十分の破壊力があった。
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