一章 事件の始まりは薄紅色

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蔵橋から並木警察署までは歩いても1時間くらで行ける。11時まではまだ時間があるので、俺は歩いて向かうことにした。 別にタクシー代をケチっているわけじゃない。確かにうちの新聞社は経費が中々落ちにくい体質ではある。タクシーを使うのはリスキーな点も否めない。しかし今回はどうも気分展開の要素が強いかな。 自分が天使だと言っていた少女の話。それはとても信じがたい話だった。だけどすべてを否定できない俺がいる。 天使や色云々の話の内容とかは、実は関係なく。彼女の透き通った瞳が、嘘や冗談を言っているよに見えなかった。だからこそ中尾さんの死の色の話は、俺を動揺させていた。 少し歩いてきたことを後悔し始めた頃に、俺は並木警察署に到着した。 会見前に、一枚のプリントがメディア関係者に配られ、それに目を通す。 今回の件の概要がそこには書かれていた。 死亡者 本城由香理 年齢  15歳 職業  並木第二中学三年生 死亡理由 溺死 9月27日 午前5時ごろ、ランニング中のOLにより、百合川の蔵橋より100m下流で水死体で発見。 死亡時刻は9月27日の1時から2時の間。 争った形跡はなく。目立った外傷はない。 事件と事故の両方の可能性があり、現在調査中。 争った形跡も、目立った外傷もないのに事件の可能性があると警察は判断している。ここは書いていない何かの要因があるのかな・・ この内容だけ見ると事件性はないように見える。 プリントに目を通していると、警察の担当が出てきて記者たちに話し始めた。 「記者の皆さん。百合川での、女子中学生の水死体発見の件ですが、現在わかっていることはそちらのプリントに書かれています。 質問はございますか」 今回こちらに来ている記者は20社ほどであろうか、今回のような警察発表に、この数は多い方だろう。おそらく発見されたのが中学生ってことで注目しているのだろう。記者の何人かが手を挙げる。そのうちの一人を警察の担当が指を指す。
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