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指をさされた記者はメモとペンを手に持ち、質問を始める。
「西京テレビのニュース99です。事件、事故両方での調査をするようですが、現時点ではどちらの可能性が高いと警察は考えていますか」
「遺体の状況から、事故または自殺の可能性が高いと考えています。しかし状況的に、事件の可能性も十分にあると考えております」
「状況と言いますと?」
「深夜の1時から2時に、中学生が川で溺れ死んだんですよ。普通じゃないでしょう」
「確かに・・」
「他に質問は?」
俺も手を挙げるが、若いから舐められているのか、弱小新聞だからか、指を指されることはなかった。
警察の担当は幾つかの質問に答えると、最後に、今回は捜査本部の設置は見送ると告げて、警察発表は終わった。
俺は一度編集部に戻り、今後の方針を考えようと移動しようとした。しかしその時、周りの空気が一変する。ざわめきが起こり。何やら騒がしくなっていく。ざわめきの中心を見ると、そこには新京新聞の中尾さんがうつ伏せに倒れていた。
それを見た瞬間・・天使の彼女のセリフが頭をよぎる。
(漆黒の色は死の色・・・あの人もう少しで亡くなります)
「マジかよ・・・・」
俺の体は小刻みに震え始める。何とも言えない感情が心の中を渦巻く。この感情は何だ・・驚き、恐怖、悲しみ・・
違うそうじゃない・・俺は・・・興奮しているのかもしれない・・
未知の何かに出会った喜び・・それに激しく興奮してるんだ・・・何なんだよ俺は・・
そんな自分の感情に気がつくと、激しくそんな自身を嫌悪する。
「救急車を呼べ!早く」
自分のそんな感情をごまかすように俺はそう叫んでいた。
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